ノアが身を引いたと思ったら、扉が開いた。ルルがとっさに毛玉を解くと、廊下に立って警護しているアンジェラが顔を覗かせる。

「ルルーティカ。ヴォーヴナルグが来たぞ」
「悪いな、遅くなって」

 大きな体に似合わず恐縮して現われたヴォーヴナルグに、ルルはジュリオの我がままで晩餐会が切り上げられたこと、ダンスはジュリオと踊ったことを話した。

 わざと傷跡を暴かれたことは黙っていたが、ヴォーヴナルグは大弱りだ。

「もっと早く来たかったんだが、城下町の居酒屋でガレアクトラ軍人が酔って暴れていて、対応に手こずったんだ」
「ジュリオ王子殿下のお付きかしら?」