ジュリオが不機嫌になったことで、晩餐会は終わった。食べかけのお皿は慌ただしく片付けられ、食後に出されるはずのお茶が運び込まれる。

 ルルの前に出されたカップの水色はうすい。急いで大人数分を淹れたから、十分に蒸らしていないのだろう。
 周りを見ると、白湯を飲まされているような渋い顔をしている。

(ジュリオ王子は我がままね。スケジュールを変更したら、たくさんの人が困ることになるのに)

 誰にも迷惑をかけない、かけたくないと思っている巣ごもり人間のルルにとって、ジュリオの傍若無人さは目に余るものだった。
 それは参加者も同じだったようだ。あちこちのテーブルで、小声で不満が沸きあがる。

 会話をさえぎるように、会場のすみっこに設けられたオーケストラで、ワルツの演奏がはじまった。

「気分を晴らすために踊ろう。ルルーティカ王女、一曲どうだろうか」
「えっ、わたくしと?」