「どうぞ」

 ジュリオが却下する前にルルが言うと、司教は、ベージュの司教服の懐から一通の手紙を出した。

「昨年、マロニー地区は大水害に襲われました。畑の土が流され、農作物が大打撃を受けたのです。その際、まっさきに励ます手紙とお見舞い金を包んでくださった方こそ、ルルーティカ王女殿下でした」

 司教が手にしている手紙は、まさしくルルが送ったものだ。

 水害では、被害が出てからすぐと、長期的な復興に対するお金がかかる。
 特に、農作物と農地への被害が深刻だったと知ったルルは、いそぎ一時金が必要だと思って、貯めていた金貨を送ったのだ。

「枢機卿団から支給される義援金は、被害額が算出されなければ下りないので、与えられるまでには長い時間がかかります。それまでの間、地区の住民が飢えずにいられたのは、ルルーティカ王女殿下のおかげです。それだけではなく、かつてマロニー地区で作られていた毛織り染めを復興して、ダメになった野菜を使ってはどうかと提案までしてくださった。感謝しております」