ノアとアンジェラは、ホールの西と東に立って異常がないか見守っている。他の雇われ騎士たちは、ここまで乗ってきた馬車の警備だ。
 彼らは『ご立派なルルーティカ王女には、これだけの忠臣がいる』アピールのための数合わせ。ここに来るまでで、彼らの仕事はほぼ終わったも同然だった。

 十名も忠誠を誓った騎士をともなって来たルルに、ジュリオ派に属しない浮動票の司教たちは驚きを隠せなかった。
 恐らく枢機卿団を通じて、ルルをおとしめるような情報――魔力を失っているとか、王位継承に乗り気ではないとか――を聞いていたのだろう。

(残念でした。わたしは、簡単にはつぶされないわよ)

 グラスをテーブルに置いて微笑むと、こっそり様子をうかがっていた参加者たちは溜め息をもらした。
 今晩のルルが、直視するのがおそれ多いほどに美しかったからだ。
 アンジェラのテクニック覿面《てきめん》である。