ガレアクトラ帝国の大使館。荘厳な石造りの建物のホールに、白いクロスを掛けられた長テーブルが配置されていた。
 
「では、素晴らしい夜を祝して」

 エシャルプを掛け、大小さまざまな徽章《きしょう》を胸元に飾りつけた軍服のジュリオがグラスを持つ。
 晩餐会の招待客がいっせいにグラスを持ち上げるのに合わせて、ジュリオのとなりの席に座ったルルもグラスを持ち上げた。

「乾杯」

 グラスを上に掲げて、注がれたシャンパンに口をつける。が、ルルは口をつけるフリだけにした。どこで毒を盛られるか分かったものではないからだ。

(出てくるご馳走もほとんど食べられないなんて、憂鬱な晩餐会だわ)