ルルは、袋から次々と金貨を取り出していく。

「ノアはアンジェラと違って、お給金はいらないって言うんだもの。いつもお世話になっている分もいっしょに――」
「ルルーティカ様」

 ルルの唇に、ノアの指が当てられた。子どもを静かにさせるときのように優しい手つきだが、表情は少し険しい。

「魔力を貸すだけなら一枚で十分です。ですが、誰かから魔力を供給するというのは自然に反します。本来ならばやってはならないことなんですよ。それに、」

 そういってルルの指先から、金貨を一枚だけ引き抜いたノアは、当てていた指で唇をなぞった。

「あまり叶えすぎると、もっとあなたを欲しくなってしまうので……」
「わたしが?」

 ルルがきょとんとすると、ノアは、はっと我に返った。