「上手よ、アンジェラ」

 キルケシュタイン邸の自室で、ドレッサーの前に座ったルルは、アンジェラの手で髪を結い上げられていた。
 三つ編みをくるくると巻いて宝石のついた櫛をさすまとめ髪は、顔周りと首に沿わせるように垂らした後れ毛が絶妙だ。

「とっても綺麗だけど……。前髪は厚めにつくってほしいわ」
「わかった」

 念を押すと、アンジェラは櫛で多めに前髪を下ろしてくれた。
 これならダンスをしても崩れなさそうだ。髪をかき上げられるのでも無いかぎり、額にのこる傷跡を見られることはないだろう。

「次は化粧だ」