「そんなのにこだわってんの、お前くらいだと思うぞー。うちにいるときも『白い団服はダサいので、黒に変えてください』ってイシュタッド陛下に詰め寄っては、笑い飛ばされてただろう」
「そんなことがあったの?」

 ノアはただの下っ端団員ではなく、兄イシュタッドに意見するような立場にいたらしい。驚くルルに、ヴォーヴナルグは呆れ顔で説明した。

「こいつ、イシュタッド陛下に気に入られてたんだよ。養成学校を卒業するとすぐに聖騎士の叙任式が行われるんだが、そこで『貴方は聖王の器ではありませんが、ルルーティカ様に仕えるまでの余興として従って差し上げます』って言い放ったんだ。教師も先輩騎士も同期も凍りついて、聖堂中が静まりかえるなか、任命してた陛下だけが大笑いしてな。『それまで頼む』って聖騎士団に迎え入れたんだよ」
「ずいぶん派手にやらかしたのね、ノア……」

 そんなノアを迎え入れたイシュタッドも相当な変わり者だ。
 ノアはむっとして反論する。
 
「私は本当のことを申し上げただけです」