実は記者はルルの仕込みである。

 金貨を渡す代わりに、行く先々で取材をして、新聞に載せてくれと頼んだのだ。
 相手からすると、わざわざ情報を集めなくても王女の訪問先が分かって大助かりなので、Win-Winの関係を築くことができた。

「ジュリオとわたし、どちらが聖王にふさわしいか決めかねるぐらい……支持率五分五分くらいで拮抗したいわ。その方が時間は稼げるでしょう。お兄様の行方については、いまだに手がかりをつかめていないし」

 慈善訪問にかこつけて、あちらこちらの人々に兄イシュタッドが行きそうな場所を訪ね歩いているのだが、状況はかんばしくない。
 活動的な人だったので、誰しもが旅行先で事故にあったと思っている。

 山に遊びにいくと言っていた、とか、海沿いの教会に用があると言っていた、とか、珍しい食べ物を求めて外国に行きたいと言っていた、とか。得られる情報を統合しても、結局どこに行きたかったのか分からない。