「ジュリオ王子殿下、マキャベル主席枢機卿。ごきげんよう」

 ルルが腰を落として挨拶すると、ジュリオはキザな手つきで長い前髪を払った。

「どこかに引きこもってばかりいるものだと思っていたよ、ルルーティカ王女。教会を慈善訪問するだなんて。僕があちらこちらに呼ばれるので、不安になってしまったのかな?」
「いなくなった兄の代わりをしているのですわ。ジュリオ王子殿下の影響ではございません」
「強がらなくてもいいのに。ねえ、マキャベル?」
「お言葉の通りです」

 マキャベルはジュリオに合わせて愛想よく笑ったが、老獪した目つきはごまかせない。誰も見ていなかったら始末してやるのに、といった風にルルからは見えた。

「ルルーティカ王女殿下にも、立場というものがありますからね。王位継承の決着がつくまでは、たとえ劣勢でも認められないのでしょう。修道院にお籠もりで世間知らずなうえ、『王族なのに魔力がない』という噂も聞こえてきます。見栄を張らなければ、とうていジュリオ王子殿下と張り合えないのですよ」