イシュタッドが『一角獣保護法』に熱心だった理由が分かった。いくら魔晶石が高値で売れるからって、空を飛ぶための角を取り上げるなんて酷い。
 人間にしてみたら、足をもいでしまうようなものだ。

 近づいてきた子どもの一角獣をなでると、自ら頬をすり寄せてきた。彼らは人懐っこい生き物なのだ。それを利用した人間の業を思うと、居たたまれなくなる。

「人間が酷いことをしてごめんなさい。これからのフィロソフィーは、あなたたちが傷つけられない国を目指していくわ」

 野性だが毛並みはすべすべしている。ルルが繰り返しなでていると、ゴテゴテした金色の装飾がついた豪奢な馬車が乗り入れてきた。

「へぇ、ここが一角獣の飛来地か」

 下りてきたのは、ガレアクトラ帝国の第四王子ジュリオだった。彼を次期聖王にと推すマキャベル枢機卿もいる。