慈善訪問を終えたルルは、ノアとアンジェラをともなって教会の裏に回った。

「一角獣《ユニコーン》の飛来地になっているのね」

 キルケシュタイン邸の敷地のように草原が広がっていて、泉で水を飲んだり丸くなって眠っていたりする一角獣が十頭ほどいる。
 聖教国フィロソフィーではよく見られる光景だ。しかし、何かがおかしいとルルは引っかかった。

「ここにいる一角獣たちは、みんな角が欠けてるわ……」

 大人の一角獣も、子どもの一角獣も、額に生えた角が途中で折れている。
 ノアは、彼らの角を指さして「人間の仕業です」と教えてくれた。

「一角獣をつかまえて、途中までのこぎりを入れて折るのです。魔力のもとである角がなくなると、一角獣は空を飛べなくなってしまいますから、ここは天へ帰れなくなった彼らの、地上での居場所ですね」