「記者は立ち去りませんね。帰り際にも写真を撮るつもりなのでしょう。訪問はどうだったか、感想を聞かれるかもしれません」
「いい答えを考えておくわ」

 教会の奥から、壮齢のシスターが現われた。

「ようこそおいでくださいました、ルルーティカ王女殿下。わたくし、こちらの教会でシスター長を勤めているベスでございます。ご訪問いただけて光栄です」
「私も訪問できて嬉しく思いますわ。イシュタッド陛下が修道院に送ってくださるお手紙に、よくこの教会の話題が出てきていましたのよ」

 兄イシュタッドは、人が来にくい場所にあったり、枢機卿団との繋がりが弱かったりする教会を、積極的に引き立てていた。

 拝礼者や観光客が少ないと、枢機卿がばらまく助成金の対象から漏れてしまう。すると、とたんに教会の運営は厳しくなるのだ。
 そういう場を訪問して、困ったことがないか聞き出し、相応の援助をしていた。