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「……って、訳なの。どう? なんか裏がありそうでしょ?」
私達二人、公園のベンチに座り自動販売機で買ったソーダを飲みながら寄り添った。
……寄り添ってるって言っても、ちゃんと距離一人分ぐらいはあるけどね。
相変わらず真斗くんは、「ふーん」と言ってサイダーを飲んでる。
今日は珍しく喋らない。
いつもなら、こういう相談事は「こうしたらいいんじゃない」的なアドバイスがあるのだが……。
まぁ、相手も久々に話したんだから返す言葉の感覚が鈍っているのかもしれない。
「……とまぁ、そんな事は置いといて、今年は桜が散るのが早いね。早すぎて、お花見もできなかったよー。おばあちゃんとお花見の約束してたんだけど、台風のせいで台無し。まじ笑っちゃうよね」
そう……いつもなら、こうして話題を変えた後も「そっか……それは辛かったね。その日の楽しみの代わりにデートでも行く?」とか話しに乗ってくれる筈だったんだ。
なのに今はどこか遠い目をして、話を聞いていないみたいだ。
……なによ、真斗くんが「言え、言え」って言うから話してやったのに!!
私はたまらず嫌な気持ちになり、サイダーを無理やり開けてグビッと一発飲み干そうとした時だった。
「ねぇ、杏里ちゃん」
ここにきて、真斗くんの口が開いた。
「何?」
いつもより、ぶっきらぼうに答えた私は彼からどう見えていただろう。
今考えていたら、裏切りに見えていたのかもしれない。
私にも知らない秘密を、彼は付き合う前もずっと言えなかったって事は、私は今まで彼の気持ちなんて考えていなかったのかもしれない。
あるいは、考えていたふりをしていたのかもしれない。
とにかく、私は付き合った時も、付き合った後も彼の事を何も知らなかったんだ。
彼の気持ちを知らなかった事が、別れた原因になった事を思い知るんだ。
やがて、彼は口を開いた。
「……あのね、実はね、その梓って奴、僕を小学校、中学校の時いじめてたんだ」

