「杏里ちゃーん。一緒に俺とご飯食べよー!!」
あの朝の事件から経って、お昼休み。
皆がワイワイ楽しそうに、ご飯を教室で食べる中、私は梓くんに呼ばれた。
「今日は、教室で食べるの?」
「うん。今日はダチ紹介したいからさ」
早速呼ばれた私は、梓くんのグループへ入る事に。
梓くん含めて合計三人の男子と、ご飯を食べる事になった。
こんな大人数で、食べるなんて久しぶり。
女子は私一人だけ。なんだか、少女漫画の世界みたい。
「俺、一条信(いちじょう しん)っていいます。よろしく。杏里ちゃんって言うんだっけ? 梓よろしく」
丸坊主にした男の子が口を開いた。野球部所属の人なんだって。
なんだか、人柄が良さそう。
「俺は、相川 旬(あいかわ しゅん)。サッカー部所属。よろしく」
相川くんは、黒いショートカットが似合うクール系だった。なんだか、物事に動じない男の子っぽい。
「んで、まぁ、知ってると思うけど俺は崎原 梓(さきはら あずは)。俺も相川と同じで、サッカー部所属。これからよろしく!!」
私達は自己紹介を終えたあと早速、ご飯を食べる事に。
正直言って、この時間はとっても楽しかった。
話してみれば、話してみるほど、話しが合う。
人は話してみないと、分からない。意外に趣味は合うものだと感じた。
ただ、あの人の話題が出てくるまでは……。
「あ、そういえば、今日教室の前にいたあのデブ名前なんて言うの?」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で空気がピリついた。
穏やかな風が吹く草花の大地に、突然、亀裂が入るみたいに。
「信、知らねえの? アイツ二年三組の古川真斗だよ。アニオタの」
旬くんが口を開いた。
獰猛な野獣が、獲物を捕らえるような、あるいは支配するようなそんな声色だった。
「アニオタ? あの体系で? ぜってー、ヤベー奴じゃん。家とかで、アニメキャラを「俺の嫁!!」とかほざいてる奴だろ?絶対。」
信くんがそう言うと、他の二人は笑った。
「確かに、すげーガンダム好きとか聞くよな。筆箱とかに好きな女キャラのバッチ付けたり、好きなロボのチャームとかバッグに付けたりしてるらしいぜ。しかも、ワキガ。人生、生きてて楽しいのか?一生蔑められる運命なのに」
梓くんはなんの変哲も無いように、残酷な酷い事を言った。
ーー「一生、蔑められる運命」
彼らを見て、息を飲んだ。
彼は……彼は、そんな人間じゃない!!
確かに、缶バッチ付けたり、バッグに好きな女子キャラクターを付けたりはしてた。
でも、でも、そんな本気でアニメを愛する彼の姿も本当に好きだった。本気で何かを愛していて、純粋なほどに素直だった。
彼らは、その純粋さも知らずに真斗くんを嘲笑っている。
悔しい……。
ーーだけど、何も言い返すことが出来ない。
だって、そんな事を言えば、空気は最悪になるだろう。
また、どんな攻撃をされるか、たまったものではない。
学校とはそういう場所。
一人が違えばみんな一斉に、その子の事を叩き出す。
「でも、杏里ちゃん、あの子と付き合ってたんでしょ?」
梓くんがそう口を開いた。
私は胸を鷲掴みにされるみたいに、心臓が縮む。
どうして……知ってるの!?
「そんな怖い顔しないでよ。杏里ちゃん。みんな知ってるよ。杏里ちゃん可愛いし、相手も相手で、相当ブスだからねー」
信くんは、笑いながら話した。
「どうして、あんな奴なんか構うの? あんなブスほっといて、もうちょっとマシな奴と付き合えばいいのにー。せっかくの青春台無しだよ。ブスと青春過ごすなんてマジ勘弁。大人になったら、死ぬほどブスと付き合わなきゃ行けないんだよ?それなら、青春のうちにカッコイイ子と初体験を済ましておいた方が断然イイよ。特に梓とかさ」
旬くんもそれに参戦して、笑顔でまるで何もないようにそう言った。
それが当たり前かのように。
ーーありえない。
一言で彼らを表すと、それ以外言葉が見つからなかった。
自分勝手で自己中な人……人の痛みや悲しみを知らない人。
この世のクズ。
「ねぇ、杏里ちゃん。あんな奴忘れよ? 別れたんでしょ?別れたのにあんなことする奴、きっとろくな奴じゃないよ。きっと杏里ちゃんみたいな可愛い子と付き合っちゃって、調子に乗ってるんだよ。自分の事イケメンだとか勘違いしてるんだよ。 ほっとこあんな陰キャ。」
私は、梓くんがとんでもなく、クズだと分かった。
だけど、私はこの関係を止めようとは思えなかった。
何故なら、この関係を辞めて仕舞えば、また真斗くんの事を考えてしまうからだ。
振り向いてくれない、そんな存在に目を奪われるのはもうヤダ。
裏切られてもいい。今だけはこの関係を続けて、忘れたいの。
「梓くん……」
「杏里ちゃん、俺と付き合おう?」
人というのは残酷だ。中身がクズだと分かっていても、外見がよければ中身なんてどうでもよくなるんだ。
「……はい」
旬くんと信くんの拍手が続いた。
でも、この拍手は世界一嬉しくない拍手。
世界で一番醜い裏切り者の私。
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