「…何があったのかは知らないけど、今まで誰にも頼らずに頑張ったのは凄いんじゃない。大したもんだと思う」

「頼らなかったんじゃなくて……そんな人がいなかっただけだもん」



簡単に認めてしまいたくなくて意地を張ってみせる。



「それでも1人で闘ってきたのは事実だろ。……凄いよ」


しかし、微かに彼の表情が柔らかくなったのを見ると、そんな意地がみるみるうちに消えていって。

…この人、こんなに綺麗な顔してたんだ。真っ直ぐ見つめた先の、彼の優しい顔につい見惚れてしまう。
そしてそれと同時に、トクントクン、と胸が鼓動を立て始めていた。





「お嬢さん」

「え?…私、」


ついぼうっとそのまま見入ってしまっていると、背後から誰かに声をかけられた。

振り返ってみると、駅員さんが心配そうに眉を下げていた。



「取り乱していたけど大丈夫?」

「あ、えっと」



どうやら周囲で様子を窺っていた人が呼んできたようで、何かあったのかとざわついていた。思っていた以上に、騒ぎになっていたようだ。



「大丈夫です、すみません迷惑かけて」

「もう立ち直ったならいいんだよ。私もね、さっきから君の様子がおかしかったから声かけようか迷ってたんだけど。“あの高校生”のおかげだね」

「“あの高校生”?」



私の隣に居るのにどうしてそんな言い方をするのだろうか、と思った時彼の姿がないことに気づく。

辺りを見渡してみると、少し先を歩く彼の背中を見つけた。