「私は行かないよ。直接説得されても行かない」
「そんなこと言わないでよ…もう気にしなくていいだろ、楓花だって悪気なかったんだから」
「黒川くん」
宥めようとする黒川くんの発言を遮ると、真っ直ぐ彼の顔を見据える。
「私が…今日わざわざ会おうと思ったのは、もうこれ以上連絡して欲しくないって直接伝えたかったからなの。黒川くんからの要件はどうせ聞けないことだっていうのは分かってたから気にしてない。とにかく私は行かない。これから先も何言われても楓花ちゃん達とは関わらないから何言われても関わってこないで。…ブロックしても良かったけど、直接会って伝えた方が分かると思ったから」
言いたいことははっきり伝えた、さあどうする。黒川くんの反応を運ばれてきたアイスティーを口にしながら待つ。
私だって本当はこんなこと言いたくない、はっきり伝えるのってストレス掛かるし勇気もいる。
今回のことだって本当は黒川くんに言ったってしょうがない。
黒川くんは"あの件"の関係者ではあるけれど直接私に何かしてきた相手ではないからだ。正直黒川くんには何の感情もないしどうでもいい。でも、あの子から頼まれて来ていると言うのなら、はっきりもう関わらないことを伝えておくしかないと思った。
何も返事をしてこない黒川くんの様子をちらっと見る。何も言わないけれどもういいかな。アイスティーを飲み干すと、小銭を置いて席を立つ。
「神山さん、」
「何?」
「えっと……どうしても、許せないの?」
もう一度確認をしてくる黒川くんは、本気で不思議に思っているようだった。この人も相変わらずだな、きっと私の考えが伝わることは彼にも一生ないのだろうと思った。
「うん。もう見かけても話しかけてこないで」
それなら少しだけ罪悪感が薄くなるから良かった、そんな自分勝手なことを思いながら最後にそれだけ告げて店を出た。
