恋人ごっこ幸福論





「楓花ちゃんとは……今も?」



テーブルの上にあるタブレット端末で飲み物を注文しながら仕方なく尋ねた質問に、黒川くんはぱっと顔が明るくなる。話を聞いてくれると思って安心したのだろうか。



「うん。今も付き合ってるよ。今日も楓花から神山さんに伝えてほしいってお願いがあって、本人からは言いづらいみたいだったから」

「伝えてほしいことって?」


言いづらいなんてどの口が言うんだか、と一瞬思ったけれど口には出さない。冷静に、要件だけを確認しようと尋ねた。



「これなんだけど」



そう言うと、スマホの画面を私に見せてくる。

画像作成アプリで作られたらしいそれは、3-3同窓会と大きく書かれたチラシのようなものだった。



「今度3-3のみんなで同窓会をしようって話になってて。川村っていたろ?アイツが張り切ってこの画像作って、みんなに参加して欲しいって声掛けてるんだ。偶然この前神山さんに会った話を楓花にしたら、神山さんにも来て欲しいって言ってさ。たまたま連絡先も知ってたから、俺が誘うことになって」

「だったらLINEで良かったよね?なんでわざわざファミレスまで呼び出すわけ」



この画像を送って同窓会来ないか声をかければ済むはずだ、わざわざ待ち合わせてまで話すような内容でもない。

それに、黒川くんが私と2人で会うなんてあの子も望んでいないだろうし。あの子の顔を思い出すだけで、胸が締め付けられるように苦しいけれど、顔には出さないように必死に耐えた。



「楓花が…LINEだと断られるから直接会って伝えてほしいって。どうしても神山さんに来て欲しいみたいなんだ」



どうしても私に来て欲しい?何を言っているのかと黒川くんの発言に耳を疑う。

あの子は私のことなんて嫌いなはずなのに、わざわざ来て欲しいだなんて……ろくなことしかないに決まってる。