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英美里ちゃん、紗英ちゃんと別れて最寄り駅を降りると、自宅の目の前を通り過ぎてついこの前まで毎日の様に通っていた道を歩いていく。
この道を通るだけで思い出す嫌な記憶、中学校の通学路の途中にあるファミレスを目指す。
"楓花から伝言で、どうしても神山さんに伝えたいことがあるんだ。どこかで時間を作って会っていただけませんか"
友達登録されていないIDから突然送られてきた、黒川くんからのLINE。
おおよそクラスLINEを退会する前に勝手に友達登録されていたんだろう。友達登録していた中学時代のクラスメートは一通りブロックしているはずだから、偶然ブロックされていない彼を通して連絡があったのだと思う。
"分かった"
いつまでも過去を引きずってなんていられない、嫌な記憶をきちんと乗り越えるために今日は彼の約束に応じる事にしたのだ。
「黒川くん」
「神山さん…ありがとう来てくれて」
家の近所のファミレス、知り合いに会いたくなくてほとんど来ることのないこの場所に来たのも何時ぶりだろう。
先に来て席を取っていた彼の前に座る。
あの子も一緒に来ていると思っていたけれど、予想に反して黒川くん1人だった。
「で、伝えたいことって何」
さっさと終わらせようと単刀直入に要件を尋ねる。が、黒川くんはそういうつもりではないのか。
「そんなすぐ帰ろうとしないでよ。せっかく会ったんだし…話そうよ、近況とか」
「私は特に話したいことないから」
「……そっか」
黒川くんは残念そうに肩を落とすと目の前のアイスコーヒーを一口飲む。それと同時に丁度店員さんから私も注文をするように声を掛けられた。
早く帰ろうにも、飲食店に入ってしまった以上せめて飲み物分くらいは滞在しなければいけない。
