「はい…」
結局ただ素直に、彼の言葉に肯定すると「うん」と先輩は小さく頷いた。
この前のことで私がぎこちない態度をしているって分かっていたんだろうか。あまりにもうまく宥められて、自分の考えがお見通しなのも何だか恥ずかしかった。
「情けないなあ…自分から頼んだのに後から我に返って1人で悩むなんて」
「誰だってあるだろ、そんなん」
「そうかもしれないけど…でも今回は大分恥ずかしいです。……先輩はもう全然気にしてないかもしれないけど」
あの日あんなにぎこちなかったのに、もう平然としていられるのが羨ましくて、ついそんな言い方をしてしまうと何とも言えない複雑そうな表情をされる。
どういう感情なんだろう、それ。つい首を傾げるとさらに複雑そうにするものだから、こちらからしたら訳が分からない。どういう意図なのか聞こうとすると、察したのか。
「全然気にしてないわけないだろうが」
「え、」
「流石にこっちも意識してるって言ってんだよ。自分でも気がついたら咄嗟にしてたし」
もしかして、また照れてる?
暗いから良く分からないけれど、複雑そうに見えた表情は照れてるように見えなくもない。意識してるって言われると、ようやく落ち着いてきたと思った鼓動がドキドキと再び激しくなる。
「そっか、じゃあ私だけじゃなかったんですね…」
「そうだよ。だからお互い様、もうマジで気にしなくていいだろ」
「ですね」
話を早く切り上げようとする橘先輩の様子を見ていると、期待していいんだという気持ちが強くなって舞い上がりそうになる。
ドキドキはしているけれど、彼も私と同じように考えてくれているのかもしれないと思うと、大分いつも通りでいられるようになった。
