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校舎の中に入ると、真っ暗でなんだかいつもと雰囲気の違う廊下をスマホのライトで照らしながら進む。
どこからか校舎内にいる生徒の叫び声は聞こえてくるけれど時間を区切っているのか、他の生徒とは全く会わない。
それにしてもどうしよう、やっぱりあれ以来だからか顔を見れない。
なんであんなこと言ってしまったんだろう。今までは大丈夫だった、どんなに辛くたってあんな要求しなかったのに。
この人なら助けてくれるんじゃないか、なんて甘えが出てしまったのだろうか。自分の感情をこんなにもさらけ出したのは、橘先輩と初めて会った駅での出来事以来だ。やっぱりこの人なら、って何処か思うようになっているのかもしれない、
だからといってあんな風に泣きつくなんて良いわけないのに。そんなことをぐるぐると考え込んでいた時。
「緋那」
「!!?は、はひ」
「……なーんで俺にビビってんだよ」
目を合わさない私に痺れを切らしたのか、顔を覗き込んでくる橘先輩に思わず仰け反る。
気に入らなさそうな彼と目が合うと、ぼっと身体中の体温が更に上がる気がした。
