『大分落ち着いた?』

『はい…』

『ん、じゃあ帰るか』



あの後、ひとしきり泣いた私は優しく宥めてくれる先輩に手を引かれ家まで送ってもらった。



『じゃあな。ちゃんと休めよ』



別れる瞬間の、彼の顔が脳裏に浮かぶ。

あの時は彼の優しさがただ嬉しくて、ずっと浸っていたけれど。我に返った瞬間、自分のしたことに一気に恥ずかしさを覚えた。

近くに寄り添うこともキス未遂だってあったはずなのに、彼の胸の中に抱きしめられたあの瞬間のことを思い出すとどうしようも出来ないくらい今でも心臓が落ち着かない。

いつもよりも体温、呼吸、彼の心音、全てがよく感じられてもっとそうしていたかった。けれど、それと同時に我に返ると大胆過ぎて恥ずかしくて、次どんな顔して会えばいいのか分からない。

絶対に平常心保てない、悶々と考えているとその時スマホが鳴る。通知を確認すると、菅原先輩からグループLINEに連絡が来ていた。


”明日の夜は学校に集合です”


それだけ書かれたメッセージに何をする気なのか想像がつかず、思わず首を傾げた。