「先輩、大好き。優しいとこも顔も髪も声も無愛想なとこも口が悪いとこも身長も素直じゃないとこも冷めてるとこもぜーんぶ」
「もういいわ。知ってるって」
「わっ」
調子に乗って彼の好きな所を挙げていると、デコピンされる。
やり過ぎたのか、さすがにいつも通りの呆れた彼がいた。
「ほら順番きたけど、どれにするんだよ」
「あ、本当だ。えー…どれにします?」
「うーん…まあここはやっぱ」
「「キャラメル…?」」
ついハモってしまって、思わず笑い合う。
こういうのすごく楽しいな、先輩もいつもより楽しそうに見える。勿論、ポップコーンはキャラメル味を買っていくことにした。
「(わー急展開だな)」
続編映画、どうなるのかなと思っていたけど結構話広がるな。
これ2時間で終わるのかな、なんて考えながら映画が始まると見入る。好きな人からしたら期待以上でなかなかいい出来では、とふとちらっと隣を見ると、目が合ってドキッとする。
タイミングいいな、こんなことあるんだ。何となく気まずくて微笑んでみると目を逸らされる。
映画集中しろってことかな、ふとそう思った時暗闇の中でも彼の顔が赤いことに気づく。そんな姿を見ると心臓がドクンと跳ね上がる。
今までもずっと先輩の行動にときめいて、勝手に翻弄されて、そんなの慣れてきたはずなのに。そんな急に好意的に接してこられたら、嬉しいけどついていけない。
「(これって……もしかして今日本当にある?)」
そう思うと、鼓動がどんどん速くなっていって、それ以外考えられなくなってくる。
ただ彼を見たかっただけなんだけど、なんでこうなっちゃったんだろう。
それ以降の映画の内容なんて頭に入ってこなかった。
