「今日俺が観たい奴で本当に良かった?」
チケットと交換して、ポップコーンの列に並んでいると、思い出したかのように尋ねられる。
「はい。この前テレビで前作やってるの観てて、私も観たいなあって思ってたので」
「ああ、そういややってたな。続編だから観たことないなら悪いなと思ってたから、観てるなら良かった」
「いつも私の要望聞いてくれてるから全然良いのに…でも気が合いますね、私達」
「そうだな。一緒に楽しめるなら良かった」
冗談ぽく言ったはずのことに、思ったより優しく笑う橘先輩に思わず吃驚する。また呆れたようにはいはい、って言われるかからかわれるかと思ったから。
…いや、もしかしたらここで私がキュンとするのを面白がってくるかもしれない、まだ分からないかも。そう思って様子を伺っていたけれど、先輩はそれ以上特に何か言ってくる様子もなかった。
やっぱり、今日いつもと違う。
前から優しかったけれど、今日は言葉の節々が以前より柔らかい気がする。もしかしたら偶々かもしれないし、私の勘違いかもしれないけれど。
「はい、嬉しいです」
「そっか」
そんなふうに接してくれるのが嬉しくて、正直に伝えるとなんかちょっと照れているように見える。
本当に可愛いな、今日。つい調子に乗ってしまって。
「せーんぱい」
「ん?」
「大好き。橘先輩のことが大大大好き」
「……知ってるよ」
あ、耐えてるけど照れた。そういうつもりはなかったけど、これでいけるのか。
いつもと違って思ったより反応がいいのが癖になってしまって。
