「……ていうか名前！！」
「なんだよ」
「さっきから……私のこと緋那って呼んでますよね？」
橘先輩がそう思う意味も気になるけれど、それよりもこっちが気になって名前呼びの方を尋ねると先輩は当然のような顔をして。
「八乙女がそう呼んでんのに俺が呼ばないの変だろ」
「え」
「これからそう呼ぶから」
私が戸惑うのもお構い無しに、はっきりと宣言してくる。
「…だからこれからは俺のことも名前で呼んでよ」
「え！？なな名前で！！？」
「そんな動揺すんなって」
ふっと笑う橘先輩にそうお願いされると、ますます頬が熱くなる。いつも通り、私ばっかりドキドキさせられている。
「じゃあ帰るか」
「……はーい」
その時ふと、先輩の耳が赤いのと、さっきからあんまり目が合わないことに気づく。
もしかして、先輩も同じように思ってくれているんじゃないかって思ったりして。
「(これは本気で期待してもいいのかも)」
なんて思ったことは先輩にはバレないように、心の奥底で閉まっておくことにした。
