「玲央ちゃんから聞きました、喧嘩の件と、……その、保健室まで運んでくれてありがとうございます。大変迷惑をおかけしました…」
「別にどっちもいいよ、全然。それより、こっちこそ急に……悪かったな。キスの振りして」
「え、ああ!はい、こちらこそびっくりし過ぎてすみません…恥ずかしい」
「驚かせて悪かったけど分かりやすいことしなきゃ黙らせられないと思ったから。別に気にすんなよ」
「気にしないのは正直無理です!…してなくてもすごくドキドキしたのに」
「まあ、そりゃそうか」
先輩は素っ気なくそう言うけれど、気にならないんだろうか。
恋愛経験無いならそういうのだって初めてのはずなのに。さすがにさっきのアレはもう少し意識してもいいと思うんだけど、そんなことを考えていると先輩がそっぽを向いたまま思い出したように口を開く。
「…そういえば、俺が嫌だったことだけど緋那が八乙女と居ることを選ぼうとしたことだよ」
「え?」
「ほら、しばらく会う時間減らそうって言ってたじゃん。なんかアイツと居る時間の方が優先されんのかなって。そういう意味じゃねえのは分かってるんだけど……それが嫌だった」
「せ、んぱい…」
「理由、言ってなかったから一応言おうと思っただけだよ。この話終わりな」
それって……焼きもち?だから元気なさそうだったの?想像してた理由と違って思わず熱くなる。
