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玲央ちゃん曰く橘先輩は視聴覚室にいるらしい。

保健室からは距離のある3階を目指して、小走りで向かう。

まだいるかな、何となくまだ居る気がして、先輩に連絡せずにそのまま目指すことにしたけれど。



「あ!橘先輩!」


3階へ上がって、あと少しで視聴覚室に着く時。丁度視聴覚室から出てきた橘先輩と目が合った。

良かった、直感通り。



「おい、寝起きにそんな走らない方がいいんじゃ、」

「え?わっ!?」

「え?」



嬉しくて、そのまま彼の元へ走って行こうとした瞬間、足がもつれてしまって。



「あ……」




気がついたら転びそうになった私を受け止めようとしてくれた橘先輩を押し倒してしまっていた。


これ、なんかデジャブだ。

あまりの距離の近さに、ついさっきのことを思い出してしまう。頬が熱い、私今までで1番顔が赤いんじゃないかと思う。

さすがに早く退かなくちゃ。橘先輩はどう思っているんだろう、いつも通りからかってくるんじゃないかと恥ずかしくて目も当てられなかった彼をちらっと見る。

しかし先輩は、思いがけないことに時が止まったように目を瞬かせて、私を見つめていて。

なんだか尚更ドキッとしてしまった。



「先輩?」


声をかけると我に返ったのか、ハッとした橘先輩は


「…おい、大丈夫か」


と言いつつ起き上がらせてくれた。