「本人が思ってなくても他の男とどうこう言われてるのがただ嫌なんだ。……そう言われる相手は俺であってほしい」



だから無理なんだと言う橘に、拍子抜けしてしまいそうになる。

なんだよそれ、なんで分からねえんだよ。

緋那に他の男が触れることが嫌なこと、他の男に絆されそうになること、他の男が緋那とお似合いだと言われるのが気に入らない感情の答えなんて1つしか無いじゃねえか。

どうしてそんな単純なことに確信持てねえんだよ、心底理解は出来ないし、イラつく。だが。



「わーったよ。わざわざ邪魔しなきゃいいんだろ」



緋那に困ってほしくない、出来ればもう悩ませたくないのはよく分かる。

気持ちが分かるからこそ、邪魔しない別の方法で向き合うことに決めた。


コイツを責めればいい訳じゃない。緋那を困らせたことについて1番悪いのは、結局俺だ。

困らせているのは分かっていた、それでもこっちを見てくれる可能性が上がればいいと思っていた。

その自分勝手さが彼女をここまで追い詰めたんだ、緋那を思うなら、奴の提案を受け入れる他ない。



「……そう言ってくれて助かるわ」

「そうかよ。俺が寛容で良かったな」



嫌味を込めてそう言うも、橘は無視して掛かってきた電話に出ていた。相手はいつも一緒にいるおちゃらけた友人…菅原とか言うやつらしい。

…頼んできた割には生意気な態度だな、本当に。

やっぱり、この鈍感野郎に対してはムカつくもんはムカつく。








「結局両思いなんじゃねえか」



奴に気づかれないように、ぼそっとそう呟いた。

緋那には絶対、橘がこんなこと言ってたなんて秘密にしてやる。