「八乙女が勝手に神山に触れるのも、名前を呼ぶのも俺はいい気がしない。なんか馴れ馴れしくて」

「は…?」

「なんか神山がちょっとお前に絆されそうになってるのも嫌だし。本人が困ってるからってのもあるけど単純に俺が別れるのが嫌だから無理なんだよ。悪いか」



強めにそう言う奴の戸惑った顔を見てつい目を見開く。

コイツ本人は特別緋那じゃなくたって良いんだろう、ただ緋那が橘のことを好きで、その事実が都合が良かったから。だから別れたくないんだろう、そうなんじゃないのか。
 


「お前…何でそんな風に思うのか分かってるのか」

「何となくは答えは出てるけど正直分からない」

「なんでそうなる!」

「はっきり確信持てないだけなんだよ。でももう少しで分かる気がするから…ずっと待ってくれてる彼女の為にもちゃんとはっきりしてから返事したい。」

「じゃあなんでさっきキスしたんだよ!ちゃんとはっきりしてから返事したいならする必要ねえだろ」

「…さっきのは振りでしてねえよ。ただお前と外野がうるさいから黙らせたかっただけ。本当は言うつもりなかったけど充分堪えてるみたいだから言っとくわ」

「振り!?他にもあんだろうがいくらでも方法、俺本気でショックだったんだぞ、何考えてんだテメエ」



つい胸ぐらを掴むと当の本人も複雑そうな顔をする。分かってんじゃねえか、それでもはっきりと俺の目を見て奴は話す。