「ただの寝不足だね」


倒れた緋那を橘と保健室に運んでくると、養護教諭にあっさりこう言われる。



「寝不足…」

「マジか?寝不足でこんな倒れるなんて普通ありえねえだろ!適当言ってんじゃねえのか!?」

「本当にただの寝不足。きっかけは他にあるんだろうけどこの暑さもあって一気に体調にきたんだろうね。まあ脱水症状は無さそうだしよく寝て起きたら水分補給して、無理しなければ大丈夫でしょう」



淡々とそう告げる養護教諭の言葉にしっくりこないが、確かに倒れる前の緋那と比較してみると、寝てる彼女は多少顔色が良くなっているように見えた。



「……何したか知らないけど、学校で変なことするのはやめなよ?」

「「はい…」」



養護教諭には、さすがに橘がキスしたら倒れた、とは言えず少し驚かせてしまって倒れたと伝えた。

曖昧な説明にどうやら疑心を抱いているようだが、これ以上詮索する気はないようで息をついた。



「寝てるだけだし2人ももういいよ。ありがとう」

「いや俺は残る!緋那が目覚めるまで安心できねえ」

「何言ってんの、彼女だって寝てる間横に居座られたなんて嫌でしょ。ほらさっさと帰った」



抵抗するものの、半ば無理矢理保健室から追い出される。

帰れって言われたって、気になって帰れやしねえ。
とりあえず何処か他の部屋で待つか、と廊下の右側へ視線を向けた時。偶然隣の橘と目が合ってしまう。


……正直、気まずいが。