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────つい数時間前。
「……おい!緋那、緋那!」
気付いた時には、気を失っていた緋那が橘に受け止められていた。
急に気を失った彼女は目の前でぐったりとしていた。なんで緋那が、急に。さっき目にした出来事へのショックなど忘れてしまいそうになるほど動揺すると同時にハッと今すべきことに気づく。
「!保健室、とりあえず俺が連れてくから緋那貸せ、」
彼女の腕に触れようとした瞬間、橘は緋那の身体を俺から交わしてくる。
「俺が運ぶから。触るな」
「……あ?んだと、おい」
文句を言おうとすると、橘は俺を相手にすることなく緋那を抱き上げて保健室の方へ駆け出した。
本当にコイツ、なんなんだ。
いつも俺の邪魔してきて、それなのに自分は緋那に対して煮え切らない態度を取り続けるこの男。
緋那から好かれてることを良いことに、ちゃっかり彼氏面してるのが更に腹が立つ。
「…ッチ、待てよ!」
ただ今は緋那を運ぶ方が大事だ。さらに文句を言ってやりたいところだが、ぐっと堪えた。
ざわざわと噂話をする他の生徒の間を抜けて、橘を追って保健室へ向かった。
