「あと、橘が緋那を待ってるつってたぞ。…俺は嫌だけどさすがに今日は行ってやれ」
「え、どこで?」
「さあ?さっきは視聴覚室にいたけど」
「分かった、ありがとう。とりあえず視聴覚室に行ってみる」
ベッド傍の籠に置いてあった通学鞄を取ると、今度こそベッドから離れる。先生は職員室に行ってるみたいだ、書き置きのメモだけ残して保健室を出た。
「じゃあ行ってくるね。…玲央ちゃん、本当にありがとう」
「良いってことよ。…俺もムキになりすぎた」
廊下に出たあと、再度私の気持ちを理解してくれた玲央ちゃんに真っ直ぐにお礼を言うと、ちょっとだけ申し訳なさそうに笑った。
ごめんね、本当に、本当にありがとう。
そんな玲央ちゃんへの気持ちを込めて手を振ると、小走りで視聴覚室へと向かった。
「ったく、本当に。あそこまで嬉しそうにされると適わねえなあ」
駆け出した時、玲央ちゃんが独り言のように、そう呟いているのが聞こえた。
