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「………ん、あれ…?」
ぼんやりとした視界がはっきりすると、真っ白い天井が映る。
ここはどこだろう、さっきまでみんなと廊下にいたはず…ポケットに入っているスマホを確認すると、時刻は14時過ぎだった。
もうそんな時間!?
よく見てみれば、ここは保健室のベッドの上。もしかして私……さっき倒れた?
そろそろ帰らなきゃ、とカーテンを開けた時だった。
「よーう、緋那」
「ひゃああああ!?玲央ちゃん!なんで、帰ってないの!」
いきなり玲央ちゃんが現れて、大袈裟に声を上げてしまう。
「ずっと待ってて、そろそろ起きる頃かと思って戻ってきた。急に倒れたからみんな大騒ぎだったぞ」
どうやらカーテンを開けたタイミングと、玲央ちゃんが到着したタイミングが偶然あってしまったらしい。まだ吃驚し過ぎて心臓がドキドキしている。
「ずっと寝不足だったんだろ?まあ……衝撃もデカかったんだろうけどそれが原因じゃないかってさ」
「衝撃…ま、まあそうだね」
そう言われると、ついさっきのことを思い出して顔が熱くなる。
橘先輩にじっとしてて、って言われて彼の顔が近付いてきた時、周囲はキスしたって騒いでいた。
……でも本当は違う、実はしていない。寸止めで触れていないのだ。
それは実際自分が1番分かっているのだけれど、あそこまで近くに橘先輩が居ることなんてない。
していなくたって、それはそれで私にはキャパオーバーだったのだ。
……とはいえ、まさかそんなことで倒れるなんて。
自分が情けなくて、本当のことは玲央ちゃんには言えない。(というか玲央ちゃんを勘違いさせるための行為だから言わない方がいいのか)
穴があったら入りたいくらい恥ずかしかった。
