「俺も悪かったから…本当にごめん。連絡もしないで」
私の謝罪を聞いた後、本当に申し訳なさそうに先輩も謝罪の言葉を口にした。
先輩も今日話したかったことはきっとこれだったんだろう、言い切った後何だか少しほっとしているように見えた。
「連絡しなかったのはおあいこだからいいんです。…だからもうこれで終わりにしましょう?」
「ああ、じゃあこれで意地張るの終わりな」
「これで仲直りですね」
ふふ、と笑って見せると先輩も口元を緩めた。
これで仲直り、こんな形で関係が終わりにならなくて良かった。
「あの…」
「あの時、何が嫌だったか?だろ」
「……はい」
……だけど、やっぱりどうしてもこれだけは気になる。
それは本人も察していたらしく、私が問いかけるより先に答えてくれた。
「ちゃんと話すから……けど」
「けど?」
「理由がダサすぎてちょっと、心の準備だけさせて」
「え?じゃあ場所変えますか?」
「いや、いい。いいから」
渋りつつも提案を却下する先輩に思わず首を傾げる。
そこまで渋るような理由ってどういうことだろうと思っていたら。
「緋那ー!」
廊下の向こう側から、さっき教室を出ていったはずの玲央ちゃんが手を振りながらこちらへと戻ってきた。
「玲央ちゃん!?どうしてまた戻ってきたの」
「元々ちょっと用があって出ただけで戻るつもりだったんだよ。って、なんで橘と一緒に居やがん……あー!!」
ご機嫌そうに近寄って来た玲央ちゃんは、私の隣に居る橘先輩に驚いたようで、バサバサと音を立てて右手に抱えていた書類を落とした。
タイミング悪く、窓から入った風でヒラヒラと書類は舞い上がっていく。
