「……久しぶり」
「お久しぶりですね」
私が目の前に来てもなお、少し罰が悪そうにしている先輩に微笑む。
私だってずっとうじうじしていたし、先輩もこの一週間気にしていたのかな。連絡がなかったのも、私と似たような理由だったのかな、と察した。
「どう、最近も大変って聞いたけど……やっぱり寝れてない?」
「正直、あんまり寝れてないです…でも全然、先輩が困ってないんだったら良いし…あ、このスポーツドリンクありがとうございます 」
「?菅原がやったんだからいいよ。俺に言ってどうすんだよ」
「橘先輩から頼んだんでしょう、そういう言い方でしたよ」
そう言うと、教室の入口で様子を伺っている菅原先輩を睨む橘先輩。
喧嘩してるから自分では渡しづらかったんだろうか、最初はここに来る気もなかったのかもしれない。結局来るなら自分で渡してくれたらいいのに。
そんなところも、隠しきれていないクマに気づいて心配してくれたことや前から私が眠そうにしているのも気づいてくれていたという事実だけで、簡単に許せてしまった。
「橘先輩」
「ん?」
「大人気ない態度取ってごめんなさい。……私、橘先輩がなんでもないからって言って何も相談してくれないのが嫌だった」
はっきり、伝えられた。自分がどうして嫌だったのかも、ちゃんと伝えられた。
どうして私はこの言葉をすんなり伝えようとしなかったのだろう、先輩は喧嘩中だって私のことを気にしてくれていた。話だってしっかり聞いてくれるに決まってるのに。
