「ここぞとばかりに利用されてんじゃないすか、それについてはどうです?八乙女先輩的には」
「ん?別に俺をどう言おうがそれに関しては全く気にしてないが?」
堂々と紗英ちゃんの問いかけに答える玲央ちゃんも、この状況自体は気にしていない。むしろ好都合そうだから困る。
「で、案外俺と付き合う方が悪くないって思うようになってきたんじゃないか?橘と居るより楽しいだろ」
「なってない。玲央ちゃんとは付き合わないってば」
「ふーん。橘の方がいい、とは言わねえんだな」
玲央ちゃんに痛いところを突かれて、返す言葉がない。
橘先輩と居る方が楽しいよ、ただ一緒に居るだけで幸せだもん。でも喧嘩中の今はそんなことはっきり言えない。だからついそう言ってしまった。
「そんなこと別に玲央ちゃんと付き合う訳じゃないんだから関係ないでしょ」
「関係なくはねえよ。今緋那が橘と喧嘩してるのは好都合だ。まずはお前らを別れさせたいからな、別に今はその気がなくていいんだって」
「っ、別れるとは言ってないよね!?」
「言ってねえけど、このまま喧嘩が続くならそうなるだろ?いつまで持つかな」
じゃあ俺はこれで、と面白そうにそう言いながら立ち上がった玲央ちゃんを更にむっと睨むけれど、「そんな睨むなって」と玲央ちゃんは笑いながら教室を出ていった。
