恋人ごっこ幸福論






「(どうしよう、全然連絡出来ていない!)」



気がついたら一週間、今日で前半の補講最終日になっていた。

なんで、この前落ち着いたら連絡しようって思ってたばかりなのにもうこんなに時間経ってるんだろう?

スマホのロック画面に表示される日付を睨みつけても変わらないのに、何度も何度も本当に今日が補講最終日なのか確認をする。


一応原因は分かっている、1つめは思ったより周りの声が厄介なこと。

この一週間、私が橘先輩と喧嘩をしているのを良いことにここぞとばかり、玲央ちゃんがやって来ていた。

ただ橘先輩と会う心配がないからか、この前宣言していた通り常に捕まえて離さない状況という訳ではなく。傍にはいるけど、あの日以来基本自由にはさせてくれた。

どうして急にそんな気になったのかはさっぱり分からないけれど、橘先輩が居ない分むしろ機嫌も良いし、皮肉なことに居ない方が平和に過ごせていた。


厄介なのは、そんな様子を見た周囲からの「八乙女先輩の方がいいんじゃない?」「玲央くんとお似合いだね」と言われることが増えたこと。

やめてほしい、って伝えた割には治まる様子はなく、なんでここまで言われなくちゃいけないのか正直分からないくらい。



「橘ファンの願望もあるんじゃないの」

「え?なんで、別に大半の人は付き合いたいとかそういうんじゃないんじゃないの」

「さあ知らないわよ、別に付き合いたくはないけど彼女が居るのは解釈違いって人が多いみたい」



私は推しに彼女が居ようが別に構わないタイプだからよく分からないけど、と英美里ちゃんは毛先をくるくると弄りながらそう呟く。