「先輩、今日は玲央ちゃんに何もされてませんから。今ちょうど別れたところだったし」
「本当?また無理してんじゃねえの。どうせ無理やり腕掴もうとしたりとか…」
「ううん、今日は本当に大丈夫です!おやつ貰っただけだから…」
「そう」
でもこれ以上2人を居合わせられない、橘先輩を無理矢理引っ張って玲央ちゃんとは反対の方向へ進みつつ、玲央ちゃんにも声をかける。
「玲央ちゃんもごめんね、じゃあ今度こそ行くから」
「おう、分かったよ」
案外あっさり納得してくれてよかった、ほっとしつつその場を離れた。
「…本当に?」
「本当です!そんなに心配しなくていいですから!」
ある程度行ったところで、橘先輩は再度念入りに尋ねてくる。
玲央ちゃんのことそこまで信用してないんだな……私を心配してくれるのは嬉しいけど、先輩がそんなに気を配らなくてもいいのに。
とはいえ、いつもに増して妙に心配してくることに少し違和感を覚える。
「玲央ちゃんのことですけど、今日は私が橘先輩と行こうとしても何も言わなかったでしょう?そういう日なんですよ、多分」
「たまたまじゃない」
「ですかね?ずっとそうしてくれたら普通に仲良くできるんだけどな…」
「え?仲良くすんの」
「えっ」
思わず先輩の言葉に過剰に反応してしまうと、彼は罰が悪そうな顔をする。
「あ、いや…間違えた。それは神山のしたいようにしたらいいって思ってるんだけど、つい」
「は、はい…」
間違えた、って。先に出た言葉が本音だと言っているようなものじゃない。
確かに玲央ちゃんのことが苦手な先輩からしたらその言葉が出るのはおかしくないけど。
