「そんだけだから警戒するな、もう無理に触らねえし」
「そ、そう……?」
確かに今日は距離感おかしくない、特に何か要求もなさそうな顔をしているし、もしかして本当なのかな?
「これからも普通に接してくれるならいいけど…じゃあ行くね」
「ああ。それ、また欲しくなったらいつでもやるよ」
あっさり解放してくれた、どうしたんだろう急に。
なんだかよく分からないけど助かった。
玲央ちゃんも朝だから忙しかったのかもしれないなんて考えながら教室へ向かおうとした時、廊下の通りにある自販機前に橘先輩の姿を見つける。
「あ!橘先輩~!おはようございます!」
「はいはい、おはよう……こっち、後ろ来て」
「えっ?ああ……」
傍に駆け寄ると、そのまま彼の背後に移動させられる。彼の視線の先は、さっき別れたばかりの玲央ちゃんに向けられていた。
「そんな意図的に離さなくたっていいだろ」
一連の流れを玲央ちゃんも見ていたらしく、彼もまた橘先輩を見据えていた。
「何するか分かんないから」
「何もしてねえよ。人聞きが悪いな」
「本当かよ」
まずい、また朝から始める気だ。今日は本当に何もされてないし何とか止めなきゃ。慌てて疑いの目を向ける橘先輩に弁解する。
