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次の日、今日も朝から蒸し暑い中補講のために登校する。
うちの高校の夏休み補講はお盆前までだから、あと少しでちゃんとした休みに入る。と言っても、8月の終わりには2学期が始まるからそんなに休みはないけれど。
休みに入るまでになんとかなるのかな、なんて相変わらず寝不足の頭で考えながらいつものように廊下を歩いていると。
「よーっす、緋那」
また待ち構えていたのか、急に目の前に玲央ちゃんが現れる。
本当にこのパターン多いな、思わずぶつかりそうになって、一歩下がりつつ苦笑いする。
「…玲央ちゃん、おはよう。わ、私用事あるから…」
「ったく、声掛けただけで警戒すんなよ」
横をすり抜けて行こうとする私を制止しながらガサゴソとポケットの中を漁る。
ほら、と目の前に差し出されたのは小分けになった袋に入ったフルーツ味のグミだった。
これ、私の好きなやつだ。子供の頃玲央ちゃんと会った時は有難くいつも頂いていたっけ。
あまりにも美味しかったから自分でも買ってみようと思って調べたことがあったけど、子供が買うには結構高いから結局買わなかったな。
「ありがとう……また何か企んでる?」
子供の頃のそんな記憶を思い出しつつ貰うけれど、ここ数日の玲央ちゃんの行動を見ていると素直に受け取っていいものか迷う。
