「最近アイツの邪魔ばっかだしどっかまた行く?」

「え、それってデートってことですか」



さらっと告げられた言葉に思わず目を瞬かせながら聞き返すと、先輩は頷く。



「ああ。もうすぐ前半の補講も終わるしお盆は部活もないから」

「い、行く!行きます」

「わかった、じゃそれで」



先輩からの嬉しいお誘いで少しだけ頑張れそうな気がして、思わずにやけてしまいそうになる。

橘先輩達が教室に戻った後も、約束で浮かれきっていた。


「緋那ちゃんご機嫌だね」

「えへへ、こうやってお誘いして貰えたらやっぱり嬉しくて」

「なんやかんやあの人もひぃちゃんを上手く転がしてるわよねえ…」



本当ひぃちゃんは危なっかしい、と肘で脇腹をつついてくる英美里ちゃんにもえへ、と笑って誤魔化す。まあそれは正直自覚ある、せめて玲央ちゃんにくらいは振り回されないようにしなくちゃな。



「…でもちょっとらしくなかったわね」

「あー橘先輩ね。結構突っかかってたね」

「2人から見てもやっぱり変だった?」



最近いつもと比べて様子がおかしい気がすることは何度かあった。

毎日こんなに色々あれば疲れることもあるだろうし、ずっと気にはなっているけど先輩は一貫して大丈夫だとしか言わない。



「ああ言ってるけどやっぱり玲央ちゃんのストレスとかあるんじゃないかな…どうしよう、気を遣わせないで少しでもストレスを減らせたらいいんだけど…」



玲央ちゃんの好意を受け入れる気がないことをどうすれば誠実に断れるのか、様子のおかしい橘先輩やみんなをどうやったら困らせないで済むのか、そんなことで頭がいっぱいで、ぐるぐるする。