見てたの?いいやそんな訳無い。だって一ノ瀬先輩はつい最近玲央ちゃんと帰国してきたって言ってた。じゃあどうして、私の疑問を察したらしい一ノ瀬先輩がにこやかな笑みを浮かべたまま続ける。
「調べさせてもらった、って言ったでしょ?なんかバスケ部の取り巻き女子から聞いたんだよね、神山さんは橘くんに助けてもらったのがきっかけで追いかけてるらしいって。ちょうど君が中学の頃に今にも死にそうな顔してる写真見つけて、もしかしたらそうかなーって推測して色々情報集めてたら辿り着いちゃったんだ、答えに」
そんなこと有り得る?
あの日の事は、誰にも話してない。橘先輩に助けてもらったことがあるってその情報だけでこの人はここまで知ったというのか。
にわかにも信じ難いこの状況に、心臓が痛いくらいに激しく脈打っている。
「そりゃ好きになるよね、ずっと誰からも受け入れられないと思ってた君の命の恩人だもん。でも、その君の橘くんへの気持ちは恋じゃなくてただの依存なんじゃない?」
「ち、違います!確かに先輩本人にも最初言われたけど、中身も知っていく上で改めて好きになったんです。依存なんかじゃないです!」
「本当にそうかな?」
「そうです!」
しつこく問いかけてくる一ノ瀬先輩にはっきりそう言い切る。
別にこの人に分かってもらえなくたって、本人が私のことを信じてくれるなら別に構わないはずなのに、なんでこんなムキになっているんだろう。
一ノ瀬先輩は、そんな私を見て一瞬きょとんとした後またにこやかな表情に戻った。
