恋人ごっこ幸福論






「みんなうちの取引先だから表面上は仲良くしてくれた。実際良い奴も何人か居たけど、俺が変わり者で泣き虫だったからだろな。居ないとこでは俺の悪口言う奴とか無理して仲良くしようとしてた奴がほとんどで対等に見てくれる奴なんか居なかった。だけど、緋那だけは違ったんだ」

「…私はむしろ嫌われないように必死だっただけだよ」

「だろうな。でも緋那は悪口言わねえし対等に付き合おうとしてたろ。泣き出したらすぐに駆け寄ってきてお菓子で宥めてくれてたしな。それで充分だったよ」



玲央ちゃんの周りに私と同じように親に連れて来られたんだろう、歳の近い子供達が玲央ちゃんと一緒に居る姿を見たことをうっすらと思い出す。

てっきりあの子供達も玲央ちゃんと普通に仲良くしてるものだと思っていたけど、そうじゃなかったんだ。だから玲央ちゃんは私といてあんなに嬉しそうにしてくれたんだ。

……私はただ何も知らなかっただけなのに。



「自分より歳下なのにしっかりしてるし良い奴だな、最初はそれだけだったんだけど……緋那が祖父ちゃんと叔母さんと話してるとこ見かけてさ」

「あ……」

「そん時普通の説教とは思えねえくらい叔母さんに怒鳴られてるから吃驚したんだけど……あんまり家族と上手くいってなかったんだよな、後からそう聞いた」


お祖父ちゃんと叔母さんの名前が出てきてついドキッとする。

具体的に何を言われたのか、それは覚えてないけどその2人と話しているなら大抵どんなことかは想像つく。

上手くいってないように周囲からも見えてたんだな、分かってはいたけど他人から言われると少し胸がきゅっと苦しくなった。