「ほら、緋那」
「え、これ」
ひとしきりゲームセンターで遊んだあと、少し休もうと駅内の休憩スペースに移動すると、玲央ちゃんは桃のフラペチーノを両手に持ってきた。
いつの間に買ったんだろう、さっきまで一緒に空いている席を探していたのに。
「付き合ってくれた礼だ。ほら俺金持ちだから、気にすんなよ」
「ありがとう…」
気にさせないようにか冗談ぽくそう言う玲央ちゃんから桃のフラペチーノを受け取る。玲央ちゃんと2人でフラペチーノを飲んでるなんて、なんだか不思議な感じだった。
気がつけば17時半過ぎ。放課後にこんなに遊んだの初めてだな…それにしても、嫌々来た割にはしっかり楽しんでしまった。
「今日どうだった?」
「……意外と楽しかったよ」
「意外とって正直だな、俺の好きなとこだったけど楽しかったならいいか」
そう言うと、愛しそうな目を向けてこられて躊躇する。
今日本当に玲央ちゃんは何もしてこなかった。
いつもだったらここぞとばかりに手を握ろうとしてきたりするのに。今日はただ本当に一緒に遊んだだけだった。玲央ちゃんは私にずっと楽しんでもらおうとしてくれていた。
「次は緋那の好きなとこに行こうぜ。もちろん2人で」
「2人では無理だよ。もう行かない」
「手強いなあ」
…まあこれも彼なりの作戦なんだろうけど。
今日は玲央ちゃんに流されてしまったけどこれ以上は絶対行かない。橘先輩を裏切るようなことはもうしたくない、…もしかしたら先輩はどうも思わないかもしれないけど。私の気持ちが嫌だからそれはできない。
はっきり告げても、玲央ちゃんは全然堪えている様子はないし、諦める気もなさそうだった。
