恋人ごっこ幸福論



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「よし、ここだな」

「ゲームセンター?」

「ああ。好きなんだけど日本(こっち)帰ってきてから来れてなかったから行きたかったんだよ」



玲央ちゃんに連れて来られたのは、駅ビル5階のフロアを丸々使ったここら辺では1番広いゲームセンターだった。


ゲームセンターか。英美里ちゃん、紗英ちゃんとプリクラ撮るために来たことはあるけどそれ以外はしたことないなあ。

かなり楽しみにしていたのか、玲央ちゃんは放課後に寄り道している学生達で賑わうフロアを嬉しそうに眺めている。

ガヤガヤと色んなゲームの音がする中を進んでいくと、玲央ちゃんはカーレースゲームの前で止まる。


「緋那これやろうぜ!隣の機種と対戦できるんだ」

「え、私やったことないんだけど」

「そうか、じゃあやったことないなら尚更やってみねえとな」

「わっ」


背中を押されてそのままストン、とゲーム機前の椅子に座らせられる。


「ほら始まってっぞ」

「え、いつの間にコイン入れたの!?って、わわ...進まなきゃ!何これ!」

「しっかりハンドルで進む向き変えろよー」


玲央ちゃんに言われた通りにしながら、何となく見よう見まねでしてみるとすぐに遊び方は理解できた。

……意外と楽しいかも。遊び慣れてるんだろう玲央ちゃんには敵わないけど、全然私でも楽しめる。