「…そうか。じゃあいいんだな、緋那がデートしてくんなかったら祖父ちゃんの仕事にちょーっと影響出るかもしれないけど」
「え」
「今うちの会社で売り出し中の新製品に祖父ちゃんの会社の部品使わせてもらってんだけど、緋那が俺とデートしてくれなきゃ別会社に変わっちまうかもな。そうなりゃ大変だな~祖父ちゃんすっげえ困るだろうな~」
「それは…困る、けど」
お祖父ちゃんの仕事持ち出してくるのはずるい、そこまでして私に行くって言わせたいのか。むっと玲央ちゃんの顔を睨んでみるものも、それくらい想定内だ、とでも言いたげな表情で全く効かない。
「ひぃちゃん!嫌なら無理にこんな人に付き合わなくていいのよ帰りましょ?」
「そうそう、こんなん脅しだし無視しよ?きっとわざと大袈裟に言ってるだけだしさ」
「そ、そうかもしれないけど」
そういえば昔、八乙女コーポレーションの会長はとにかく交友関係を誰よりも重視する人だから、この人の会食は大事にしなきゃいけないなんてお祖父ちゃんが言っていたような気がする。
いや、だからといって私が玲央ちゃんの約束を断ることが繋がるのかどうかは分からないけど。
でもふと思い出してしまうと目の前の彼が自信満々に告げることが本当なんじゃないか、という気もする。そもそも私が玲央ちゃんと知り合ったのもその会食だし、子供にまで交友関係が求められているのかも…。
「とにかく緋那に悪いようにはしねえしちょっと遊びに行くだけだよ。じゃあそういうことで、行くぞ!」
「えっ!!?別に許可はしてな…ちょ、玲央ちゃん待って」
「ひぃちゃん!」
「緋那ちゃん!」
躊躇する私を待ちきれなくなったらしい玲央ちゃんは、急に私の手を引いてそのまま走り出す。
背後から2人の声がしたけど玲央ちゃんの足が速いのか、2人が追いつくよりも先に姿が見えなくなってしまった。
