「わ…天井まで水槽になってる!」
「でかい水族館ってどこもトンネル型の水槽あるよな」
「そうなんですね!聞いたことあったけど初めて見ました。大きい水族館来たことなくって」
「ふーん、だからさっきからはしゃいでんのか」
自然光が入る水槽の中を泳ぐ魚が、どこを見渡しても視界に入る。
海の中を再現しているような空間にいつまでも見入っていられそう。
「すごい、本っ当に綺麗…しかもいろんな魚が居ますね」
「トンネル水槽も気に入った?」
「はい!他の展示も期待度上がってきました」
「そっか、」
幻想的な空間に高まった気分のまま返事すると、急に優しい目を向けられるからついドキッとする。
なんでそんなに優しく見つめてくれるんだろう。デートだから普段より優しくしようとしてくれているのかな、分からないけれどらしくない彼の行動にときめかずにいられない。
「つ、次!こっちは熱帯魚?カラフルな魚居るみたいです」
「ああ、じゃ次の展示行くか」
「はい、行きましょ!」
私はさっきから不意打ちを狙おうとして何も出来ないでいるのに、先にそういうことされるのずるい。
ドキドキしてこのままだと目も合わせられなくなりそうで、気持ちを落ち着かせようとトンネル水槽を抜ける。
「あ、ちょっと待った」
「え?」
次の展示エリアに入った時、橘先輩に呼び止められて思わず振り返る。
その瞬間ぐいっと身体を引き寄せられて。
