恋人ごっこ幸福論






とにかく関心してるだけじゃ駄目だ、橘先輩にいつも通りときめいて終わるだけじゃ何しに来たんだって話だもん。

好きにさせてみて、って言われたんだ。絶対ドキドキさせなきゃいけないんだ。


なんとか手を繋ごうとチャンスを待つけれど、どのタイミングで行くべきか。いざ自然に繋ごうとすると意識してしまって、緊張してきてタイミングが掴めない。


そのままドキドキと自然に手を繋ぐことに頭がいっぱいになっている内に今日のメインである水族館へと到着してしまったので、一度手を繋ぐことから意識を離すことにした。





「目の前で見ると大分立派になったな」

「大きいですよね、楽しみです」

「うん。イルカショー丁度始まるっぽいし行く?」

「はい!」



家族連れやカップル、友達同士で賑わう中入場手続きを済ませると、人の流れに沿ってイルカプールへ向かった。


すごい、人沢山いるなあ。

子供の頃見た光景とは全然違う感じについきょろきょろ辺りを見回してしまう。


見たことないもの沢山見れそうで楽しみだな。

イルカのプールも大きいし、立派なステージだしなんだかわくわくしてきた。ついに初めてのイルカショー、嬉しい。

席に着いてショーが始まるのを待っていると、そんな気持ちで胸が高鳴ってくる。



「そこらのガキんちょと同レベルだな」

「えっ」

「さっきからずーっとにやけてる」


どうやらずっと観察されていたのか、隣に座る彼は動揺する私にポーカーフェイスでそう言う。

子供と同レベルって、そんなに分かりやすく楽しみにしているのが顔に出てたのだろうか。