6月第3週目、つい先日天気予報で梅雨入り宣言が発表された。
「今日も雨凄いよね」
「本当よ~湿気で髪が広がるんだけど」
6限目が終わって、帰宅の準備でざわつく教室の窓から見える景色は、ここ数日どんよりとしたグレーの雲がかかった雨景色だけだ。
ちっとも収まりそうにない強い雨に不満げな表情の紗英ちゃんと、ご自慢のゆるふわヘアがまとまらずにイラつく英美里ちゃんを眺めながら私も窓の外を見つめる。
梅雨の時期は、あまり好きじゃない。
朝からずっと湿っぽい空気が漂うようになって、洗濯も乾かないし、陽の光が見れないとなんだか気分も上がらない。
「今日からテスト期間入ったからこの時間帯帰りの電車も多いでしょ?もう嫌んなるわ」
「しかもチャリ通がこの天気で普段乗らない電車使うから…」
「アホ程混むじゃないのよ!もうイラつくわ~」
「英美里ちゃん…今日はまた一段とイラついてるね…」
髪が決まらないだけでなく、テスト前だということで些細なことにストレスを感じ始めてるな。
紗英ちゃんと2人でとにかく宥めるのも日常になってきた。
「てか緋那ちゃんはそろそろ行かなきゃいけないんじゃないの?」
「え?」
紗英ちゃんにそう言われ、黒板の上の壁掛け時計に目をやる。時刻は16時48分。
「うそ、もうそんな時間!?じゃあ私先に帰るね」
「うんうん、気を付けてねー」
「ちょっとは進展してくんのよ!」
「わ、わかったよ」
2人に別れを告げ、ガヤガヤと騒がしい廊下を抜けて小走りで靴箱へ向かう。
到着すると、下校する女子生徒達がちらちらとある一箇所に視線を向けている。もしや、と直感でそちらを確認してみれば案の定スマホを操作する橘先輩の姿があった。