「一緒に帰る?」
『帰る』
「自転車の鍵貸して」
手を伸ばしてきた湊に、自転車の鍵を渡した。
2週間前は、これが当たり前の毎日。
けどこの風景が、
当たり前ではない事を痛感した瞬間だった。
湊は自転車に跨って、何故かこぎはじめた。
進むのが早すぎて、追いつけず…『早い!』と言うと「ごめん」と素直に謝ってきた。
謝られると、それ以上は言えず…
湊の乗っている自転車の後ろを歩いていた。
湊と一緒に帰れる事がこんなにも幸せな事だと実感した。
もう、喧嘩はしたくない…
きっと頑固な私たちの事だから、するだろうけど、できるだけしない方向で進めたい。

